Nurin AIRY stay has finished in big success on Jun 27th.
「赤い絵と黒い絵の間にヌルディンがいる」(坂本泉)
ムサエフ・ヌルディン油彩画展オープニングのとき歌人黒沢忍の提案で唐突に始まった短歌WS。その中でAIRY運営者坂本泉さんが作った短歌。
AIRY滞在中の絵には、キルギスにいるときに描いたものに比べて心細さがにじみ出ており、黒を多用していることを滞在制作を支えてきた泉さんは鋭く見抜き、ギャラリー内で両方の作品群の間で揺れるヌルディンのことを詠っていました。
6月27日、ヌルディンは甲府を旅立ちました。若かりし青年美術家による4月30日からの約二ヶ月間に渡る初めてのレジデンスは、x軸y軸の上を波打つ放物線のように山越え谷越えの様々なことを乗り越えムサエフ・ヌルディン油彩画展へ漕ぎ着いたようで、この期間中いろいろなことがありました。
突然始まった短歌WS。おしゃべりを愉しンデいる方々も、クロッキーデッサンをかいてもらっている方々も、そのとき居合わせた人たちはほんの3分間、ヌルディンの作品、展示会場をみて想像力をめぐらせました。
「黒い目で見つめられて描かれし 我は白い紙の中にいる」(村松奈津子)
「絵心わからず苦心しつつキルギスからの風を感ず」(村松芳明)
「“Welcome from Kyrgyz !”“Nice trip to Kyrgyz !” AIRY is crossing of the world」( kaoru )
「ヌルディンの煙草くゆらす自画像のさびしい心に小指はむかう」(浅川洋)
「働くぞ キルギスの空食べに行く 明日の夕食まかないだ」(山内廉)
「6月のこんなに細い雨の夜 小学校は真っ暗な海」(黒沢忍)
「キルギスの国より来たる青年の 描きし似顔絵に笑顔あつまり」(ちほを)
キルギスからの風をさすが、おお、短歌を普段やってなかろうが、各々がもつやわらか~な頭はこのときの展示会のひととき思い思いに語りました。
そして短歌という文化自体初めてであったヌルディンは・・・
「Эсен журуп Эстей жур」というキルギスの詩を述べました。
ちなみに日本語では「お元気で、そして私を思い出していて下さい」英語では「Take care of yourself and remember me always」だそう。
最後のお別れとなる一人ひとりに高ぶる思いを立ち止まって話す、篤い気持ちを表わすところは、パーソナリティーから来るところに加えて、母国キルギスの文化的背景も窺わせるものでした。
泉さんが若手アーティストの成長を見届けられることのよさがあることを今回の滞在を思いながら語っていたことがありましたが、キルギスから来日した画家は同世代の友人と夜クラブへ行くことを愉しみ、普通の青年となんら変わりません。そんなピュアな心を持つ若手アーティストに対して、このAIRYでの滞在制作はアーティストとして自覚することへ確かなる一石を投じることになったでしょう。再来日と再会を約束する彼の表情は、レジデンスをやり遂げた自信に満ちて、山梨でお世話になったすべての人への感謝で締めくくられたことをここに報告いたします。(文責:今村)