シネマ・チュプキ・タバタを訪ねて

甲府のミニシアター休館ニュースは、日本の映画界が直面している変革期を象徴している。シネコンだけの街になってしまうのだろうか・・

東京や横浜、名古屋のミニシアターは休館後に異なる経営者を得て再開したり、クラウドファンディングで資金を集めて再開に漕ぎつけたり。「やまなし短編映画祭」を三年間甲府で運営して感じるのは、サブスクリクションで自宅で映画を観る人が多いこと。あるいは大駐車場を擁する郊外型シネマコンプレックスに駐車しての映画鑑賞のお得感は否めないこと。アート系、哲学系の映画を観たい人は少ないこと。集客力のある映画だけでは物足りない人はどうすればいいのか?街のなかで映画体験したい人はどうすればいいのか?

というわけで都内のミニシアターを訪問してみた!

参考:「やまなし短編映画祭」記録↓ (2021,2022 記事もあり)

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シネマ・チュプキ・タバタ

山手線北方面はあまり訪れる機会がない。田端駅に降り立って商店街を北へ5分ほど進むと目を引かれる三階建てビル、一階がシネマで二階がオフィス (イヤホン音声ガイド用「字幕吹替」作業など) になっている。

チュプキはアイヌ語で「新しい光」
モザイク細工の小さな看板かわいい
一日目のお目当てはコレ!
「響け!情熱のムリダンガム」
キャンセル待ちで席をゲット
二日目は
「荒野に希望の灯をともす」「哲学の教室」
「響け!情熱のムリダンガム」(音声ガイドイヤホンを借りて)を視聴

で、何が素晴らしいってここは客席数20という超ミニシアター、どうやって運営しているのか興味津々です。すべての上映作品に副音声ガイドを付け、邦画も全て字幕を付けているこのユニバーサルシアターには、料金に障がい者割引システムがありません。障がい者のいる社会が当たり前になるようにとの代表以下、7年間続く全運営スタッフの思いでもあります。

また、創業時にはクラウドファンディングを行い、日常的にサポーターから寄付金を受け付けるなどチュプキのファンを増やしており、館へのリピーター率はかなり高いと納得させられます。わたしも予想外の二日連続チュプキ通いになるとは・・

かわいい赤いシートはゆったり設計で快適
友だちの家で映画を観るような雰囲気~

丁寧なキャンセル待ち対応、ポイントカードやお誕生月プレゼントなどきめ細かいサービス。スタッフの親切で嫌味のない案内にも感動を隠せず

こんな映画館があるなんて初めて知って感激して舞い上がるとー

チュプキ初視聴は「響け!情熱のムリダンガム」インドの音楽青春映画、急きょ配信元のアフタートークが設定されたとのことでラッキー

配信は稲垣紀子さん(左)   音声ガイド声優は水口真名(右)

小さい映画館のフットワークの良さ、急きょトークイベントのプレゼントとは!!しかし驚くことに、稲垣さんは南インド料理店を夫と経営する一インド映画オタク(自称)なんです。好きが高じて日本での配信権(5年間有効)を買ってしまったという熱い人。わたしはインドの打楽器と言えばタブラは知るも、ムリダンガムは初見で初聴なり。南インド発祥の 「カルナータカ音楽」はほとんどが即興で、より理論的で厳密な規則を持っているらしい。打楽器+声楽+弦楽器が即興で奏でられる劇中ライブは変則リズムや超テクニックを駆使してものすごい躍動感にあふれる。若者、家族、恋愛、伝統、身分制度をベースにした秀作に間違いない。翌日は音声ガイド付きでもう一度視聴したのです。

写真撮影に気軽に応じてもらい
稲垣さんの南インド料理店「なんどり」(荒川区)訪問を約束して
視聴用個室

メイン20席の後方に小部屋があるのは「親子室」とでも言いますか、都合で一般の席で観られない人のための完全防音スペース。料金割り増しはナシ、メールか電話で要予約です。小さいお子さんがいて映画館で観ることを躊躇している方や、長く座席にいることが得意でない方のための愛に溢れるスペースです。ここまでチュプキの愛を知ったならもうリピーターは必然ですよね。ありがとうございます涙

「やまなし短編映画祭」常連の
青柳 拓 監督も『東京自転車節』をこちらで上映したそうです。
ウーバーバッグかわいい!

さて、チュプキで二日間4本を観た翌日は当館が定休日、約束していた南インド料理店「なんどり」へと向かいます。

JR尾久駅から徒歩10分
都電荒川線沿いに佇むカラフルなシート看板が目印

南インド料理店「なんどり」に到着

ランチ後に撮ったので一時クローズになってますが、ちゃんと南インド料の定食「ミールス」をいただきましたよ。(写真撮り忘れ)

やはりインド文化に熱い稲垣ご主人と対面
「響け!情熱のムリダンガム」日本各地での上映予告やお知らせや
ペイントで装飾された店内はインド好きが溢れてました。

配信権の買い上げや事後の手続き、そこから始まる日本各地での上映行脚にまつわる告知や実施など。日々ここで料理をしながらアイデアを練ってインド愛を届ける稲垣ご夫妻です。また、日本中のインド映画愛好家の聖地となっているようで、楽しみながら活動の輪を広げてる様子。その行動力にただ感動するばかりです。